アメリカでの食品の機能性・効能表示規制制度と一般食品での実態に関して

先日,とある診断士の研究会で,アメリカでの食品の効能表示の実態はどうなっていますかという質問があった。簡単に調べてみたので,自分のための覚書としてここに掲載しておく。ただし,この記事は,なんら助言をするものではなく,内容の妥当性,最新性も保証しない。

機能性表示の全体像

基本的に,アメリカでの食品の効能表示については,健康食品でしかできない。事業者の自己責任という考えで制度ができているようだ。

米国等における食品の機能性表示制度 2014/12/20 消費者庁

消費者の安心・安全確保に向けた海外主要国の食品に関する制度に係る総合的調査 アメリカ編 2009/07 消費者庁
食品行政制度の概要比較表…2009/07 消費者庁

健康食品の現地輸入規則および留意点:米国向け輸出 2014/01 JETRO

以下,上記JETROの資料からの引用

5. ヘルスクレーム(健康強調表示)
A. ヘルスクレームは、疾病リスクを減らすことに限定され、病気からの回復や治療効果は表示できません。ヘルスクレームを行うには、公表データによって科学的に立証され、専門家の支持が必要です。それらをもとにFDAに申請して許可を得なければなりません。

B. 留意点
最近の事例では、FDAは「最近の当社の研究によれば、冠状動脈の罹患リスクをもっている人に対し、緑茶あるいは緑茶のフラボノイドがコレステロールを著しく引き下げる効果があった」という内容のヘルスクレームを表示した米国企業に対し、医薬品に該当するものであるという理由で、表示を中止するよう勧告しました。
米国ではヘルスクレームに対して、FDAから中止勧告を受けて商品の自主回収を余儀なくされるケースや、消費者団体や弁護士事務所が科学的根拠に乏しいヘルスクレームを行って消費者に誤解を与えたとしてメーカーを提訴するケースがあります。こうしたケースでは、回収費用が発生する、あるいは莫大な損害賠償金の支払いを余儀なくされたケースもあります。ヘルスクレームは慎重に行ってください。
FDAが認めているヘルスクレームの一例を以下に示します。
「Three grams of soluble fiber from oatmeal daily in a diet low in saturated fat and cholesterol may reduce the risk of heart disease. This cereal has 2 grams per serving.」

一般食品での実態と考察

先日米国現地で買い求めたT社の緑茶ティーバッグ商品には,Naturally Decaffeinated, Natural Source of Antioxidants, GREENS: naturally refreshing teas with smooth taste という表示がある。

これについては以下の疑問が浮かぶ。

  1. 緑茶ティーバッグが制度上の健康食品にあたるのか
  2. Natural Source of Antioxidants という表現は天然由来の抗酸化物質という意味かと思うが,抗酸化という表現が含まれている。機能性表示にあたるのか
  3. naturally refreshing teas という表現はリフレッシュできるという意味かと思うが,これはさすがに機能性表示にあたらないと判断されるのか

元品質管理担当者としてはおっかけてみたいが,今日のところはこのへんで。

初めての海外展示会参加で成果を上げるために

海外販路開拓の手法の一つとして,展示会や市場視察は重要な手法の一つだ。ところが,準備不足で思ったような成果があがらなかったということが多い。成果をあげるための心得をいくつか紹介しよう。

そもそも輸出・展開できるのか

前提としては,そもそも出品したい商品・サービスが相手国・地域に輸出できるのか,展開できるのかだ。ここをクリアしていないと,どんなに魅力的な商品・サービスでも,第一歩が踏み出せない。食品・農産物なら検疫制度や関税制度で制限のある場合があろうし,サービスだと,例えば中小企業診断士が外国を訪問して現地で企業診断・支援をして現地で対価を得ると,違法となる場合もある。まずは,JETROでそのあたりを調査する必要がある。

自社の戦略に合う展示会を選ぼう

海外展示会への出展は費用がかかる。輸出関連は補助金やら支援策やらが多くなっているが,それでも時間というコストは避けられない。出展/視察する展示会は慎重に選びたい。探すには,JETRO(日本貿易振興機構)のデータベースがまず参考になる。

ただし,このデータベースにすべての展示会・商談会が登録されているわけではないので,検索サイトで”開催国・地域名 exhibition”などと検索してみることをお忘れなく。

また,ターゲットとして狙う層が来てくれる展示会か否かは,その展示会の公式サイトをチェックして確認しておこう。いずれの公式サイトも,過去の開催実績を掲載している。前年・前回の出展者数,来場者人数,展示会の主な参加者プロフィール,写真付きレポートなどは,参加展示会を見極める上で大いに参考になるはずだ。

商品・サービスのコンセプトと価格,送付方法をはっきりさせておこう

英語や現地の言葉に訳したパンフレットを準備する際,商品・サービスのコンセプト(ターゲット,対応ニーズ・想定使用シーン,特徴・独自性)を文章にしておくと良い。あえて外国語に訳してみることで,足りない部分や論理的に表現できていなかった部分が見えてくる。

また,現地で購入できる価格の提示は必須。そのためには,あらかじめ送料や関税の料率なども調べておく必要がある。

協力者とのコミュニケーション

現地で通訳や,アシスタントがつくことがある。こうした人達には,自社の商品・サービスの特徴を事前によく理解してもらおう。また,ブース来場者との話をまとめた商談記録を,後日まとめてわたされるなどというシステムがとられることがあるが,ぜひ,当日,コピーをとり,アシスタントなどとその記録について,簡単な振り返りをおこなおうべきだ。記録にはちょこちょこ間違った情報が記載されてしまうことがある。展示会場は忙しいのでミス自体は起こりうることと心得,それを早めに発見することが大切だ。帰国してからではわからなくなってしまう。

現地の生活に触れよう

食品関係の出展者でも,現地にいくと日本人同士で日本食ばかり食べていたり,タクシーばかり利用している事業者さんが多い。もったいない話だ。現地の食,現地の生活を体験しよう。安全に配慮する必要はあるが。

現地滞在中にフォローや情報収集をしよう

商談記録や実際に会った際の印象などをもとに,先方事業者がどれくらいビジネスに結びつきそうかの度合いをランク付けし,できればお礼状を現地でだそう。また,展示会終了後,先方の事務所や店舗・倉庫を見に行こう。

参考資料

JETROは,「初めての海外見本市のために‐出展のポイント」という書類を発行している(同機構のサイトからダウンロード可能)

チェックリスト

  • そもそもその商品・サービスは相手国・地域で展開できるか
  • 開拓先の都市・地区が定まっているか
  • 現地で入手できる価格ははっきりしているか
  • 商談シート記録は当日まとめられたか,ふりかえりができたか

ニューヨーク出展を支援してきました

創業190年の老舗茶問屋さんのニューヨークでの展示会出展を支援してきました。こちらは事業者さんの報告。

展示会も無事終了。レストランオーナーやホテルの料理長、スーパーマーケットや百貨店のバイヤーさん、多くの来場者が宮ザキ園ブースにお越し下さいました。アンケートや市場調査では高評価をいただき、海外マーケットの可能性を感じる展示会でした。

Posted by 宮ザキ園 ( 日本茶と「わ紅茶」のある暮らし) on 2015年3月14日

創業190年の茶園「宮ザキ園」が米国市場に挑戦!

東海地域農林漁業成長産業化推進協議会さんに支援事業者さんが紹介されました。

【認定事業者の挑戦①】創業190年の茶園「宮ザキ園」が米国市場に挑戦!宮ザキ園 梅村篤志さん愛知県岡崎市の茶園「宮ザキ園」が、3月7日から10日、ニューヨークで開かれた食品展示会に出展し、ほうじ茶、わ紅茶、緑茶の3種類を実際に試飲し…

Posted by 東海地域農林漁業成長産業化推進協議会 on 2015年3月30日

香港の商標登録制度情報

ーとある事業者さんに提供した情報を記録として掲載しておく。

⚫︎⚫︎農園様

お世話になります、魚野です。表題の件、以下お知らせいたします。ちなみに愛知県の支援策は締め切りが6月末と差し迫っておりますが、あいにく魚野は水曜日から台湾出張のため、仮に申請されるとすると
一部のみのお手伝いになってしまいます。ご了承ください。

◼︎香港の商標登録制度概要
一般社団法人発明推進協会 APIC外国相談室が、特許庁からの委託を受けて調査した資料が掲載されている。
http://iprsupport-jpo.go.jp/
http://iprsupport-jpo.go.jp/miniguide/pdf2/HongKong.pdf

JETROサイト内にある、香港の知的財産制度を解説するページに掲載されている模倣対策マニュアル2014参照
http://www.jetro.go.jp/world/asia/hk/ip/
http://www.jetro.go.jp/world/asia/hk/ip/pdf/2004_hk.pdf
概ねイギリスの制度に則っている。また、日本語の文字を登録することもできる。

◼︎実際に登録されている商標の検索方法
香港政府の知的産権署のサイト内に、英文または中国語での検索サイトがある。
http://www.ipd.gov.hk/sc/electronic_services.htm

◼︎商標登録に必要な費用
上記の概要ファイル内に、費用一覧が掲載されている(ただし、非居住者の出願には弁護士など代理人をたて、手続きを行うが、その費用相場については例えば以下のような事業者が掲載していた(単に検索して見つけたのみであり、推奨しているわけではない。JETROや後述のあいち機構の担当者に相談した方がよい)
http://www.by-cpa.com/jp/html/news/200811/73.html

◼︎愛知県の支援策
愛知県が中小企業を対象に、外国への知財出願支援を行っている。
http://www.aibsc.jp/tabid/314/Default.aspx
また、ウィンクあいちに入居するJETROに、農産物輸出相談窓口あり。
http://www.aibsc.jp/tabid/314/Default.aspx

以上

中国で農業投資を行おうとする場合の参考情報

自分のためのまとめ。20121003調査
 
■基本情報…農産物の生産法人の設立:中国(JETRO)
 http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/qa/03/04A-111102
 基本的なことはここに全て書いてあります。

■商工中金の海外展開支援(オーバーシーズ21)
 http://www.shokochukin.co.jp/finance/case/overseas.html
 http://www.shokochukin.co.jp/corporation/raise/kind/original/
 資金調達で現地金融機関と提携など

■OVTA関係
 http://www.ovta.or.jp/info/investigation/chn_casebook/index.html
 農業にかぎらず,現地で日系企業が直面する課題に関する資料です。

■中国の土地制度及びトラブル事例
 http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/reports/05001524

■中国農業土地問題研究会
 http://iccs.aichi-u.ac.jp/activity/china_agri.html

■農業進出に関する現地での受け止められ方
http://su-mi.iza.ne.jp/blog/entry/2297871/
 http://j.people.com.cn/94476/7388677.html
 http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0525&f=business_0525_068.shtml

■日本政策金融公庫関係
・農林漁業者の海外展開に関する資金制度
 http://agri-biz.jp/item/detail/6524?page=2
 海外での販売や,海外での加工施設取得に対する資金融資

■JETRO関係
・国・地域別情報 – 中国
 http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/
 投資制度に関する網羅的情報。
・中国-食品・農林水産物
 http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/foods/
 輸出向けの情報だが,網羅的。
・農林水産物・食品輸出促進本部
 http://www.jetro.go.jp/news/announcement/20120201622-news
 2012/1/20 設置完了。

■農林水産省関係
・海外農業投資に関する情報…
  http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/toushi/index.html
  一般情報の提供であり,実際の進出にあたっては参考程度。
  ただし,「海外農業投資をめぐる事情」最新版には,日本からの
  海外民間農業投資の最近状況が,資料に紹介されている。

・東アジア食品産業海外展開支援事業…
  http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/food_tech/f_jigyou/e_asia.html
  機能性食品などを海外展開するための補助事業。

■事例
・山東省に進出したアサヒグループ「朝日緑源」
 http://www.asahigreensource.com/japan/

2012/09 貴州省出張を終えて

尖閣諸島の国有化を発端として日中関係が軋む中,中国西部の消費市場の現状と将来を知るため,2012年9月8日から12日まで貴州省,12日から13日は北京市を訪問し,現地で様々な活動を行った。日本から見ているだけではわからない現地の人々の考えや活動を見聞きし,多くの発見があった。酒類博覧会の報告は別途稿を改めることにし,ここでは現地での魚野の活動と,それによって得た知見などを差し障りの無い範囲で紹介したい。

貴州省・貴陽市の現況紹介

貴州省は四川省,広西省,重慶市などに囲まれた,中国でもっとも貧しい地域のひとつであるが,また一方で,豊富な森林・水資源,投機の対象にまでなっている国酒茅台酒の産地,あるいは夜郎自大という言葉で知られる野郎国があった場所としても知られている。中国政府は国内格差の解消を目的として貴州省から広東省などへと送電をするプロジェクトがあるなど,西部大開発の対象地域のひとつである。今回の出張のきっかけは貴州省の省都,貴陽市で開かれていた国際酒類博覧会の開催であるが,これも,中国中央政府の主催の形をとっており,西部大開発政策の一環といえよう。

貴陽市は周囲を山岳に囲まれ,周年,日本でいう春から初夏のような気候である。気温が30度を超えるようなこともなければ氷点下を下回るようなこともなく,避暑地,避寒地として過ごしやすい場所だ。但し,熱帯性気候らしく夏は曇りがちで,すっきりした雲ひとつ無い過ごしやすい夏というわけではない。貴州省は前述のとおり,野郎国として独立していた期間もあるが,近代以降は概ね中国歴代朝廷・政府の支配下にあった。

水資源が豊富であることは,アジア第二位の滝があることでもわかる。森林・山岳地帯は未開発の場所だらけであり,ここに水力発電所をたくさん作り,電力が不足しがちな広東省などに送電することで,当地の経済成長につなげるという計画があるとのこと。また,貴陽市周囲は市政府をはじめとして不動産開発が未だ相当盛んであり,現在の人口規模の数倍の収容人数を想定した住宅が建設されている。このプロジェクトについては滞在中,周囲の政府関係者や民間人士に何度もそれほどの需要があるのか,誰が住むのかと聞いてみたが,納得のゆく説明はなく,バブル期の日本に近いという印象を持った。

もっとも,貴陽市旧市街は山間の盆地を埋め尽くしており,郊外に市政府を移動させてその周囲にもニュータウンを建設し,省内の農村部から労働者を吸収することでさらに市場を大きくするという話は労働力を吸収できる基幹産業がいくつか育っていけば可能わからないでもない。候補としては,観光サービスくらいしか思いつかないが。

貴陽市・貴州省の普通の人々の暮らし

今回の出張の目的の一つは,中国でもっとも乏しい地域の一つである貴州省での暮らしの現状がどのあたりに迄到達しているかを自分の目で確かめることにあった。別稿では貴陽市の富裕層の暮らしにも触れているが,あくまでボリューム層である一般の人たちの暮らしを知るべく,いわゆる市場にいってみたり,ニュータウンのショッピングセンターを訪ねたり,郊外農村部を訪ねたりした。

貴陽市市内では,大学教授といった階層なら自動車を保有しているし,市内をゆく自動車運転手には若い女性が一人で自らハンドルを握っている姿も多々見られ,自営業者や経営層くらいであれば自動車を保有するほどの豊かさがあるようだ。

市内は坂道が多く,自転車の利用は少ない。圧倒的に多いのは電動バイクで,街を歩いていると音もなく近づいてくる。荷運び三輪車も電動のものが多く,日本とは別の形の,文字通りのモータリゼーションが進んでいる。中国では市内移動が多いことから,電動車でも十分需要があることは聞いていたが,それを実感した。

食事は伝統的な中国料理が圧倒的で,旧市街部では喫茶店,和食・洋食レストランはほとんどみかけなかった。市内移動で気がついた唯一の外食レストランは郊外ショッピングセンター内のケンタッキーとケーキ屋くらいであった。もちろん市内を探せばあるのだろうが。むしろ,狭い道路に連なる食材や定食を提供する昔ながらの市場が目立つ。

着ているもの,身に着けているものは,かつての社会主義時代ほどではないものの,やはりシンプルで,中国大陸らしい地味なファッションという印象。女性も化粧はしていないように見える(この点,魚野は詳しくないので薄化粧なのかもしれないが)し,髪も,ストレートが多い。カバンなど持ち歩くものについては,市内では例えば農村から農産物を売り歩きに来ている農民は竹の背負子や農村でよく見かけるプラスチックの袋などを持っていることが多い。ホワイトカラーは一部,ブランド品を持っている。

こうした観察から,自分なりの結論としては,事前の推測通り,中間層を対象として海外の食品やファッション関連商品・サービスを持ち込むのはやや時期尚早という印象。変化は速いと思われるので,定期的調査は必要だろう。一方,富裕層開拓については,市場規模からいっても,現状の販路網がほとんど無い点からいっても,他の地域も対象とした通販か,人脈を介したネットワーク販売のような既存流通とは違った販売網が必要なようだ。

貴州省の醸造関連産業

中国で茅台酒は国酒扱いである。国酒というからには外国からの賓客が来ると,茅台酒でもてなすのに使われるということ。wikipedia-Jの茅台酒解説ページには,田中角栄やニクソンがもてなされたとある。高粱を使った白酒の一種だ。蒸留酒であるために悪酔いはしないと言われるが,香りがきつく,個人的にはアルコール成分以外の物質もかなり入っているのではないかと思う。また,留学生時代(1980年代後半)や会社員時代(1990年代),白酒を大量に飲んで吐いたり二日酔いになっていた同級生や同僚・先輩を多数見ており,翌日に残らないというのは言い過ぎではと思っている。

閑話休題。今回視察した博覧会では,茅台酒の派生商品(醸造技術が異なる白酒)を複数目撃した。貴州省の,名前も聞いたことのないような地方にも白酒醸造技術はあるようで,しかも最近の茅台酒ブーム—投機の対象にまでなっている—に乗じて新たな醸造商品の開発・発売が盛んになっているようだ。

また,貴州省に住む少数民族,ミャオ族は,文化習慣が日本のそれとよく似ていると言われるが,その例の一つに日本酒とよく似たコメから醸造したお酒や,納豆によく似た豆の醸造品を街でよく見かけた。製造箇所は不明。今後,調査してみたいところだ。ミャオ族の食は外国人が行くようなレストランではあまりお目にかかることは少ないようだが,今後,観光業が盛んになれば,こうした地元特産品が脚光を浴びることもあろう。

※今回の出張の帰途立ち寄った北京では,地下鉄車内などで度々白酒の匂いを感じた。持ち運んでいてこぼしてしまったのだろうか。まだ気温が高かったせいもあるが,こうした高額商品を持ち歩く人が多いことが示唆される。

おまけその1-北京滞在

今回の出張では帰途は北京経由だった。事情があって1泊することにし,留学生時代の思い出の場所を訪ねることにした。とはいうものの,もう25年も前,わずか1日ほどしか滞在しておらず,記憶に残っているのは北京飯店の外観くらいである。

宿泊は前門の近くの四合院を改造した安宿にした。個人経営であり,シャワーとトイレ,洗面所が一室になり,寝室の窓は内庭側しか開いていないところであるが,値段の割には駅や前門大街にもそこそこ近く,いい感じであった。

前門から王府井まで地下鉄で移動し,北京飯店を見に行った。1階のロビーはかなり改装されていたが,車寄せなどは以前のままで,ここでタクシーをひろったなぁと感慨。王府井は全く記憶に残っていなかったが,北京飯店の角から王府井書店が見えたので,早速いってみた。当時は留学生の同級生と一緒だったのでおそらく書店はいっていないが,今回は一人旅,気兼ねなく本屋を楽しめる。

マーケティング書コーナーや中国語工具書(工具書とは辞書などのこと)コーナーをじっくり見て回る。看板にはいまだ「内部書店」の表記があり,興味をそそられたが,さすがに今回はカバンを引きずっていたため冒険はしなかった。

おまけその2-中国国際航空の旅

往路は上海経由,帰途は北京経由で,中部国際空港(セントレア)と貴州空港を往復した。いずれも中国国際航空(CA)の運行で,海外線は全日空との共同運航便だ。CAはスターアライアンス加盟のため,全日空のマイレージを貯めた。相変わらずエコノミーだったが,座席のクラスは初めて見るU。Yと何が違うのか興味をそそられたが,これはまだ未調査。機内の座席の広さは国内線も含めてピーチよりは広い。食事は,見た目や統一感などの点で日本の航空会社のそれとは比べるべくもないが,味そのものは以前の民航時代に比べたら激変した。これならば,日本の航空会社を使って高いお金を払うよりは,CAで十分ではないかと感じた。ただし,遅れがあるのは相変わらずで,往路は名古屋発上海経由が30分の遅れ,帰途は貴陽発北京着が30分の遅れ,北京発名古屋着が1時間の遅れであった。

帰途,隣り合わせたのは魚野が卒業した大学に交換留学生として向かう中国人学生。学部・専攻コースまで同じで,たまたま読んでいた温州人の本がきっかけで話をしはじめ,3時間,ずっと英語(と時々魚野は中国語)で留学のことや日本社会のことを話していた。こういう偶然もあるものなんですね。

終わりにあたって

今回の貴州省出張では,中国の未開発地区の都市部の現状を調査してきた。概ね事前の推測通り,外国産品を買うような層は少なく市場は小さいものの,経済発展は著しい。ただ,その発展が官主導の不動産開発によっている点が気になる。

日本産品をいますぐ輸出するのは労多くして益少なしと思うが,引き続き,定期的に調査していきたい。また,周縁の重慶,四川省,広西省などまだ一度も訪ねたことのない地域も,いずれ調査してみたい。

201205香港出張

2012年5月19日から22日,日本食品・農林水産物の輸出の可能性を探るため,6次産業化プランナー,中小企業診断士の仲間と香港に出張してきました。

現地では,流通関係者や政府関係者との面談・ディスカッション,事前調査情報の共有のためのミニセミナー,現地小売市場(高級スーパー,一般スーパー,日系ショッピングセンター,いわゆる伝統的な街路の市場など),和食レストランの視察,タウンウォッチングなどもりだくさんのプログラムでした。

今回の出張でわかったことは,1)香港市場の魅力の本質,2)正面攻勢での香港市場攻略の難しさ,そして3)こうすれば開拓できるのではないかという可能性,の3つです。

1)香港市場の魅力の本質

香港は人口約700万人の都市国家といっていいくらいの地区ですが,年間3,000万人以上の外国人観光客がやってきます。気持ちは概ね親日的。特に若い世代は日本への強いあこがれを持つ人も結構います。また,香港での流行が,観光客を通じて,広く世界各国に情報として流れていきます。英語を話せる人が多く,日本の事業者が商談しやすいことも魅力です。香港政庁が,食品流通のハブとなることを目指しており,つい先日,貿易発展局総裁と農林水産大臣が日本の農林水産物・食品の香港への輸出促進協力についての覚書を交わしました。更に,香港は台湾とならび,中国投資の窓口役を担って来ました。これは,香港市場を通じた中国市場へのアクセスのしやすさ,リスク回避のしやすさをも意味しています。

2)正面攻勢での香港市場攻略の難しさ

魅力あふれる香港市場ですが,日系大手小売業者がかなり以前(魚野が1988年に香港に行ったときは既に日系の百貨店がありました)から進出し,日本食品を扱う強力な卸売会社もあります。有力な日本メーカーの商品は,日系のお店や高級店には結構ならんでおり,すでに子会社や現地卸売市場を通じてそうした現時点での有力チャネルの小売店店頭がかなり抑えられているものと考えられます。特に,日本酒については,現地でかなり豊富な種類の銘柄,サイズを見かけました。新たに開拓するとしたら,よほど商品や売り方に特徴がないと,なかなか厳しいのではとおもいます。

3)こうすれば開拓できるのではないかという可能性

一方で,現地に行って様々な売り場を実際に見たり,取り扱い事業者,政府関係者とディスカッションを重ねてわかったことは,まだまだ大きな可能性を香港市場は持っているということです。これについては,今回行った仲間と一緒に,今,作戦を練っています。これから香港市場を開拓しようとする愛知・三重の二県の事業者さんやその商品の特性を生かし,今までにないやり方で香港市場の開拓ができそうだと,いまからワクワクしています。

どんな事業者が海外ビジネスを考えるべきか(1)〜既存事業で利益は出ていますか〜

前回の投稿からずいぶん日が経ってしまったが,海外ビジネスを考えはじめたときに考えるべき最初のテーマとして,どんな条件を備えた事業者が海外ビジネスを考えるべきかを考えてみよう。

■事業の状況…海外と国内,どちらをねらう?

海外ビジネスを考えるべきかどうかを考える前に,まず国内ビジネス,あるいは既存の事業で,ある程度の利益を確保できているかを検討してみるべきだ。海外に出張したり,商談したりするだけでも費用は国内の何倍もかかる覚悟が必要である。また,そもそも既存の事業がうまくいかない,つまり経営のノウハウが確立できていないのに,よりリスクの高い海外に出ていったとしても,成功する確率が低いのは言うまでもない。

確かに,製造業をはじめとする多くの事業者が,海外展開を試み始めている。理由ははっきりしていて,親会社の要請に従ったか,円高や人口減少という日本国内でのビジネスの 難しさを危機ととらえて自主的に行動したかのいずれか,あるいはその両方だ。経済成長が続く市場での経営のほうが,成長が容易になるし,縮小する市場での競争は,熾烈になる。例えば,食品は,食べる人が少なくなれば,売 れる量も少なくなるので,国内だけに展開する食品関連メーカーは,イス取りゲームを続けているような心持ちだろう。

こうした中,企業の勝ち残り策を非常に単純化すると,海外を市場として活用するか,国内で何らかの形でナンバーワンの地位を獲得することのいずれかになる。実際,大手食品 メーカーは海外の食品関連企業を買収したりして,海外を販売市場として活用しようとしているし,先進的な中小食品関連企業は,新しいカテゴリーの食品を開 発したり,限定した地域で独自の地位を確立したりといった戦略をとっている。日々の操業や資金繰りに追われ,そうした戦略をとれない企業・事業者は,どん どん経営の選択肢が狭まっていることを実感しているはずだ。

海外ビジネスを考えるべきかどうかを考える前に,まず国内ビジネス,あるいは既存の事業で,何らかの形でナンバーワンになれないかを検討してみるべきだ。国内のビジネスでは立ちゆかないとあせって海外ビジネスに突入することは危険である。航空機のパイロットは,選択肢を狭めない決断をすることを基本としている。企業経営の場合,まずは既存事業で一定の利益確保ができていることが,選択肢を持つ,あるいは増やすということにつながる。

次回は,異文化に対する態度について考えてみよう。

輸出を考える小規模事業者に確認したい3つのこと

今,小規模事業者の間でも,日本市場の将来を悲観して,海外市場を開拓しようという動きが広がっている。こうした動きは基本的に賛成だが,海外には多くのリスクがある。それゆえにそうした取組を始めたいという事業者に,3つの点について確認したいのだ。それは,その事業者にとって本当に海外活用が最適なのか,きちんと海外市場や海外取引について学んでいるか,そして,日本の小規模事業者なりの勝負の仕方をしようとしているか,の3点である。まず,今日は本当に日本社会は悲観的な将来しかないかという点について考えてみよう。

今,日本経済の将来に対して悲観的な見通しが広がっている。短期的には,復興需要やもともとの経済力によって幾分景気はよくなるだろうが,人口も減り,新興国に追いぬかれ,日本は衰退するという。魚野は基本的にこうした考えとは違った将来を描くべきだと思っている。隣国に豊かな国・地域が出現するのなら,それはこの国にとって大きなチャンスになる可能性がある。

まず日本には,こだわりを尊重し,それを産業化できる伝統がある。江戸時代より,日本の工芸品・芸術作品は全世界で注目を集めていた。高度成長期,広義の品質(Q:機能・性能・デザインといった狭義の品質,C:価格(とそれを実現するコスト低減),D:納期(必要なときに必要な数量を提供するという意味を含む)の3つからなる)を極めた工業製品が世界を席巻した。たしかにMade in Japanの工業製品というのは,人件費が世界一となってしまった現在,競争力に乏しい場合も多いかもしれない(もっとも,農産品を中心に,十分競争力を持つ場合も多いが)。しかし,Made by Japan, Designed in Japan, Produced by Japaneseといった,日本文化の特性を生かした商品・サービスの供給には,可能性が詰まっている。世界から見た日本という存在は,昔も今も,かなり大きいのだ。

また,日本には,豊かな資源がある。海に眠る天然エネルギー資源しかり,農山漁村にある豊かな文化,美しい風景,ものづくりの世界にある改善という知恵と,それを実現する人を育てるノウハウ(もっとも,これは多様化する価値観に合わせてやり方の修正という工夫は必要だが)しかり,街のストーリーしかり,自然災害に対峙する工夫しかり,…。不足しているのは資源ではなく,その資源を活かせるのではないかと気づき,工夫を重ねる人と,取りくむための冒険心つまり,「創造的な人」なのだ。

生産年齢人口が減るから経済が衰退するという議論がある。新しい,高齢者市場,退職者市場の出現に目を向けたらどうだろうか。ITや運送技術の発展を生かし,豊かになった近隣諸国をはじめとする諸外国を市場としてみてはどうだろうか。単一価値観を尊ぶ社会を転換し,多様化から創造性を引き出す社会への転換に成功すれば,いっそうの可能性が広がる。偏狭で感情的な排外主義や卑屈な感情の裏返しである差別意識を克服し,海外社会出身の流動民を受け入れるようになれば,こうした動きに拍車をかけることも可能だろう。

高齢社会への対応の遅れから,税収が減り,政府財政が破綻する,ひいては日本が破綻するという議論がある。たしかに日本政府に対する海外からの懸念は一定程度あり,信頼が失われる事態に至れば,経済の混乱は必至だ。だからこそ,政治に一方的に期待し,短期的に成果が出ないと次々と指導者を取り替えるといった投げやりな態度ではなく,一旦選んだら一定程度の期間はまかせる,税負担を口にしただけで感情的な拒否反応をすることをやめるといった,成熟は必要だろう。だが,この国の国民は,それくらいの成熟度には達することができる。たとえその糸口が,不幸にも大きな災害であったとしても。

東京が豊かに繁栄して,名古屋が没落しただろうか。近隣地域の勃興が,日本の零落に即決するだろうか。知恵と勇気で工夫を重ねていけば,つかみとれる可能性のある機会と強みは十分にあるのだ。

明日は,どんな事業者なら海外活用を考えるべきかという点を検討したい。