2010年ノーベル平和賞発表さる

今年のノーベル平和賞が発表された。事前にかなり噂になっていたとおり,2010年のノーベル平和賞は,中国で収監されている民主化運動家,劉暁波氏が受賞した。

劉暁波氏は,天安門事件での運動や08憲章の起草,発表などを通じて,共産党一党独裁制に反対し,市民を啓蒙して中国社会を変えていこうとしていた。

一方,中国政府は,劉氏を国家政権転覆扇動の罪に問い,収監,政治的権利を剥奪しているだけでなく,中国国内で受賞を知らせるNHKやCNNの放送を中断させたりした。報道規制があるようで,中国大陸の有力新聞などのニュースサイトではこの受賞のニュースをまったくとりあげておらず,ざっと探した限りでは中国外交部(外務省)のウェブサイトに掲載されている,劉暁波氏の平和賞受賞に関する報道官の質疑応答を記したページくらいでしかとりあげられていないようだ。とりあえず,このやりとりを日本語で紹介しておこう。

質問:10月8日,ノーベル委員会が今年のノーベル平和賞を中国の「異見人士」劉暁波に与えた。このことに関してコメントは?

回答:ノーベル平和賞は,「民族の和睦,各国の友誼の増加促進,軍縮を推進するために招集,宣伝された平和会議やその努力をした人」に贈られるべきものであり,これがノーベルの遺志である。劉暁波は中国の法律に触れたとして中国の司法機関に懲役刑の判決を受けた犯罪人であり,その行為とノーベル平和賞の趣旨は相反している。ノーベル委員会は平和賞をこのような一個人に与えたが,これは完全にこの賞の趣旨に違背し,平和賞を冒涜もしている。

質問:劉暁波の受賞は中国とノルウェーの関係に影響を与えるか?

回答:近年,中国とノルウェーはずっと良好な関係を保持,発展してきた。これは両国と両国国民の根本利益に有益である。ノーベル委員会が劉暁波に賞を与えたことは,ノーベル平和賞の趣旨に相反するだけでなく,中国とノルウェーの関係にも害をもたらす。

※魚野注:中国語では,人名を呼び捨てにすることは一般的には失礼に当たる表現ではない。中国では夫婦同士で互いにフルネームで呼びあったりする。

こうした中国政府の主張には,論理の飛躍があり,違和感を感じる。このやりとりを見ると,中国としては劉暁波氏が政権転覆扇動活動を通じて民族の和睦とは相反することをしたと主張していることになるが,反体制活動が即,民族間の対立をあおることに直接むすびつくとはいいきれない。

また,中国の裁判所は,憲法126条で行政からの干渉を受けないとされているが,一方で憲法89条第8項では国務院(行政機関)に司法行政の監督権限が定められていたりして,そもそも三権分立の一つを担う位置づけとなっておらず,また行政機関による監督は,こうした政治犯の裁判での公平性には大いに疑問を生じさせる。

ただ,「異見人士」という中立的な表現を質問者が使い,それをそのまま政府の公式サイトに載せているということは,政府の記者会見に出席できる立場の人達の間でも,政府と一定の距離を持って問題を見ている人がいるということをうかがわせる。

中国の少数民族自治区での強制土地収用の実況がtwitterでなされていたり,政府が規制するニュースは口コミで広がるなどして,中国の情報統制は,日本で一般的に考えられているほど効果をあげているとはいえなくなってきている。隠されたもので現れないものはないのであり,いずれ,受賞のニュースは中国の国民の知るところとなる。中国の市民がこのニュースを知ったとしたら,当然,賛否両論,あるいは無関心といった様々な反応があろう。中国市民が自ら考え,その考えを自由に発表し,議論できる社会,外国に責任をおしつけることで国内の不満をそらすといった,戦前の日本のようなムリを重ねなくてもよい社会が,早晩,中国において実現することを期待している。

尖閣諸島(釣魚島)の衝突事故で考えたこと

中国のインターネット上では日本政府が尖閣諸島(中国側の呼称は釣魚島)で衝突事故を起こした船舶の乗員を開放したことを中国の勝利だと祝っている声が多い。普段は中国政府の専制に反対している民主化勢力まで,同じようなことを述べており,民族主義的な主張が中国内で盛り上がっているように見える。だが,本当の勝利とはなんだろうか。

折しも日本は与党民主党の代表戦の真っ最中で,外交問題,安全保障問題への対応に遅れが生じるのではないかと懸念されていたが,発生後,1週間も立たないうちに船舶の航行に責任や権限を持たない一般乗員を帰国させ,責任者である船長を,日本国内の法令に則って取調べを継続している。個人的にはこれは手落ちがあったとまでは言えず,むしろ,冷静な対応をしていると評価している。一方,中国政府も,社会の安定を重視する立場から,この件で当然予想される民間の過激な行動をある程度抑制することに成功しているようだ。

今回の事件に,中国側は度々,丹羽宇一郎駐中国大使を呼び出し,抗議の意思を伝えている。その回数はすでに5回に及び,5回目は深夜に呼び出している。魚野が違和感を持つのは,中国側との面会の際,丹羽大使が述べた日本政府の立場や見解を,中国の報道機関が報道しないことだ。報道抑制は当然,中国当局の意思が影響しているのだろうが,国民が一方的な公式見解を聞かされ,別の見解や反論が知らされにくい,言い出しにくい社会は,民主化の遅れと評価されても仕方なかろう。この意味で,中国の民主化勢力が乗員の帰国決定を中国の勝利だというのは,甚だ違和感を覚える。

もっとも,日本の報道も,深夜呼び出すという行為について感情的に非礼だと見解を述べることはあっても,なぜそのタイミングで深夜呼び出したのか,どのような事情があるのか,分析や検証が見られなかった。日本の報道機関が速報性を重視し,分析や解説が少ないという,構造的な問題が背景にある。中国が,気ままに振舞う大国主義的な外交は長い歴史のあることであり,経済成長が世界で突出する中,こうした態度をとることは不思議なことではない。日本の外交は,こうしたことを織り込み済みで,冷静な対応をしている。社会の安定を重視する中国の政権が,報道規制をしていることも,不思議ではないが,より注目すべきなのは,例えばなぜ深夜呼び出しがあったのかについての嫌がらせ以外の要素にあるのではないか。そうした深い内情を知ることで,有効な,win-winとなる対抗手段も出てこよう。

日本は,幸いそうした自由な報道,検証活動の伝統を根付かせている。これは中国に対する強みであり,中国の報道機関も,外国メディアの引用という形で巧みに当局の意思に反する内容の報道をしていることを考えれば,こうした冷静な中国国内の分析は,中国社会に民主化を促す材料となろう。

本当の勝利とは,政府見解に対して,疑問や反対意見の表明,検証が自由にでき,国民がそれらの議論を通じて自分の見解を固めていき,社会の意思決定ができるという,民主的なプロセス,市民自ら考えるという習慣を根付かせることができていることであり,その意味で,今回の事故の対応を見る限り,いずれも勝利者とは言えない。

在中国因特网的社会里有许多人士说,日本政府解放在尖閣諸島(中方叫钓鱼岛)发生冲撞事故的渔船乘员就是中国的胜利。日常反对中国政府的专制的民主势力也说这样,可以说在中国国内民族主义的风气起来。可真的胜利是什么?

目前,日本与党民主党举行着代表选举,有的人士担心对于这个外交,安全问题的日本政府的对应不适,可事故发生后一个星期以内解放没有责任,没有权限的一般工人,按日本国内的规定继续审讯负责人。我觉得这样对应不可以说有错误,与其批评冷静的。另一方面,从重视社会稳定,中国政府也努力控制容易可发的民间人士的过激活动而得。

中国政府按这个事件已招丹羽宇一郎駐中国大使,表示抗议的意思。召大使已五次而第五次的传唤发了深夜。我觉得不调和的感觉的事是中方报道机关不管丹羽大使表明的日本政府的意见。这样报道控制大概影响中国政府的意思的,可也可以说,不容易发表,得到伟伦,反论的社会不适合民主社会,还在专制社会。按这样的看法,我觉得中国民主分子说乘员回国是中国的胜利这样的意见很奇怪。

但是,日方的报道机关对于深夜招呼大使的中方行动只说不礼貌,可还没有剖析为什么在这个日期做了深夜招呼,有什么事情。这样事情的后面有日本报道机关的重视报道速度,不重视剖析,解说的想法。中国的大国主义外交有历史,目前的经济发达也突出,中方的态度没有奇怪的。日本外交已熟悉中方的这样习惯,已做冷静的对应。中国共产党政权重视社会稳定,控制报道也很自然。重点就是为什么深夜招呼,故意使人不痛快的行动要素以外有什么事情等等。知道这样内部信息,可以考虑到实现win-win关系的手段。

在日本,可以说我们很幸福,公民可以得到自由报道,鉴证的活动的恩惠。这个就是对于中国的优点。中方报道机关常常利用外国媒体的报道,介绍和政府的看法不一样的意见。有这样的需要的话,日方的冷静剖析中国国内政治因该使中国社会进一步民主化。

我想的真真的胜利就是对于政府的意见,有表示异议,反对,剖析的自由,而实现普及公民也按这个议论做自己的看法,社会也按自由的议论做决定的民主过程,定着公民自己考虑的习惯的社会。从这样的看法来看,日中两国还没到胜利。

今朝目に止まった中国の新聞記事

  • 南方報業網が、ワールドカップで敗退した北朝鮮のサッカー事情について報じている。前回大会で日本チームに負けた際,関係者が炭鉱送りにされる制裁を受けたとの噂を北朝鮮が否定しているとしつつ,現在でも選手は禁欲的かつ外部との接触を避ける傾向にあることを紹介した上で,記者は古い精神主義の北朝鮮サッカーは変化の必要があろうと述べ,おそらくそれには政治体制や社会体制に対する批判も含まれている。
  • 同じく南方報業網が,昨年の中国の流動人口が新華社ニュースを引用し,「中国流动人口发展报告2010(中国流動人口発展報告2010)」が出版されたことを報じている。それによれば,中国の流動人口は現在二億人を超えているが,以前のような生存型ではなく,発展型に転換しつつあると述べていると伝えている。
  • 同じく南方報業網が,新京報の報道を引用し,雑誌「財経」の編集者が2名の暴漢に襲われ,負傷したこと,報道の報復ではないかとの推測を伝えている。

蟻族

蚁族(蟻族):特に80年代以降に生まれた大卒で,収入が低い層をいう。こうした層は一定地域に集まって生活しており,蟻族と呼ばれている。

中国では住宅価格が急上昇している一方で,結婚するには住宅を所有していなければという意識が強まっており,特に若い世代を中心に,住宅購入熱が高い。

ところが,リーマン・ショックで一時的に景気が減速したことや,そもそも大学を卒業した時点でエリートとして管理職についていた人たちがマネジメント能力を鍛えていないために会社のお荷物と化した社会主義経済時代の記憶や労働集約型の企業が依然多いから,大学卒業生の就職が厳しい。

南水北調

南水北調:中国南部の水を北部に導水し,北部の水問題を解決するプロジェクト。

日本に長く住んでいると水が豊富に手にはいるのは割と当たり前という感覚についついなりがちだが,世界の多くはそうではない。中国もご多分にもれず,水の確保は容易ではなく,特に,首都北京の水を将来的にも確保することが至上命題となっている。

中国南部の比較的豊富な水を北部に導水路を使って運んでしまおうというのが南水北調だが,それによる影響も大きく,今日見かけたニュースでは,河南省の浙川県で南水北調のために6万5千人がこのプロジェクトのために移住を余儀なくされるとのことであった。リンク先のサイト(中国語)では,おじいちゃんが携帯電話らしきものを手に持ち,カメラに街の様子を収めている写真が掲載されている。

こうした大規模なプロジェクトを進め,住環境や自然環境に大きな変化をもたらすことには中国国内でも批判の声があり,三峡ダムや海南省リゾート開発などにも反対運動がないわけではないが,日本的に言えば公共の福祉優先,中国風に言えば国家百年の計?,一旦始まったプロジェクトは着々と工事が進められていく。

質量

質量:品質のこと。

餃子事件の報道の中に,中国の王勇・国家質量監督検験検疫総局長の名前が出てきた。質量は品質,検験は検査・実験の意味で,この職位は中国国内外向け製品の品質保証を監督する部署の責任者ということだ。

日本では品質というと,性能・機能の高さだとか,デザインのよさといったことが思い浮かぶが,ものづくりの世界でいう品質は,顧客の要求する需要の三要素の要求水準を満たすこととされている。需要の三要素とは,狭い意味の品質(Q),コスト(C),納期(D)の三つである。納期には,必要な期日に必要な数量を間に合わせるという意味が含まれているので,Qualityを質量と訳す中国語の方が,質と量の二要素を含んでいるだけ含蓄が深いとも言える。

警察条例

中国では明日6月1日から,公安机关人民警察纪律条令(公安機関人民警察紀律条例),略称警察条例が施行される。中国語でいう公安は,日本の警察を意味する。つまり,この条例は警察紀律条例と考えればよいだろう。

実際,中身を見てみると,法律に則って捜査活動をせよとか,容疑者を虐待してはいけないだとか,心構えのようなものがたくさん並んでいる。処罰の規定もあるが,どういう条件だとどのような処罰に成といった基準が曖昧で,解釈によってはいかようにも処分できるようだ。

日本では,例えば警察官職務執行法,警察官等警棒等使用及び取扱い規範,警察官等拳銃使用及び取扱い規範,警察官等特殊銃使用及び取扱い規範,警察官等の催涙スプレーの使用に関する規則,…などといった法律,規範,規則などによってかなり詳細に使用想定場面(例えば武器を使用してよい場合の条件が限定して列挙してある)を定めている。

※ちなみにすでに2000年に施行済の公安机关人民警察内务条例(公安機関人民警察内務条例)というものもあるそうだ。ざっと眺めてみると,勤務態度や服装などについて規定している。

「不同意見」需要包容(異なる意見をゆるそう):人民日報

中国の人民日報が,5月25日付4面人民論壇欄に,異なる意見を許そう(”不同意见需要包容)という署名投稿を掲載した。ネット上の過激な罵り合いをやめ,寛容をもって異なる意見を受け入れようという内容だ。署名は袁敏傑氏となっているが,残念ながらどのような人なのか(人民日報内部の記者なのか,外部の民間人なのか,あるいは公的な職位の人か),検索してもよくわからなかった。

一党独裁というイメージが強い大陸中国だが,実際には中国社会では様々な変化がおきている。政府の方針に反対したり,批判することを少なくとも魚野が留学していた当時よりはかなり広い範囲で許容するようになってきているし,実際,そのような活動も活発になってきている(影響力がある人がそれをしようとすると,相当の圧力がかかるようだが)。

圧力を受けている著名人の一人は,この論評を引用しながら,実際には政府と異なる意見を発表すれば国家機関が動員されて圧力がかかると皮肉を述べている(こと人は,実際に日々かなり政府当局から数多の圧力を受けている様子が伺える)。

人民日報は中国政府の意を受けて編集されており,ときおりこういった,世論の反応を測るような,政府の政策・許容範囲をやや超えた記事を掲載する。報道の自由が制限されているこの国では,基本的には許可を受けた報道機関の記事か,あるいはその転載しかニュースとしては報道してはいけないことになっているので,印象的な記事はあちこちのサイトに転載される。そして早速この記事も,中国のあちらこちらのサイトに転載されている(例えば環球報

民告官

民告官:

[min2gao4guan1] 行政に対する陳情や,行政訴訟の俗称。

関連記事:

中国の最高裁判所は今年いっぱい,行政訴訟チェックキャンペーン「行政訴訟百万案件評価審査活動」を展開(南方報業網)

最近,中国では行政に対する不満が表沙汰になることが多くなってきており,行政訴訟も頻発している。行政訴訟が百万件という数字にすこし驚かされるが,従来より,中国では訴訟ではなく,仲裁や陳情によってトラブルが解決されることが多く,今回は陳情案件も対象に含むとしているので,このような数字が出ているのだろう。

また,この活動で重点がおかれているのは,複数の拠点(市・省・中央官庁など)に持ち込まれた重複案件の整理や,適切に下級裁判所で処理されなかった案件の是正,としている。ねらいは庶民の行政に対する不満の緩和だろう。

関連語句

官司 [guan1si]:訴訟。打〜 訴訟を起こす。

上访[shang4fang3]:陳情に行く。