準備はできているか

福田総理が辞任を表明した。政権運営の行き詰まりがいろいろな現象として現れてはいたが,やはり突然,政権放棄という印象は拭えない。ことに,困難を承知でと述べつつ,新たな布陣をひいた直後での退陣は,やはり不信感をかき立てる。

困難な時期に,各所に配慮した話し合いでの解決という誠実な手法が通じなかったが,これは,リーダーの確固たるビジョンと信念が不足していたこと,総理大臣の権限集中の度合いの弱さから衆参のねじれという状況を乗り切る道を見いだせなかったことによると思う。自民・民主大連立という構造転換の施策の他に,これといったアイディアが出て来なかったことが残念な点である。野党第一党の代表選挙日程や国会開会前,サミットの終了後といった様々な要因を考慮した会見日程の選択は,やはり保守長期政権という構造の延命策なのだろう。

政権だけでなく,日本の政治も,経済成熟などによる新しい価値観や目標が示せない中で,対立する矛盾を解決できないで,もがいている。民主,自由を前提とし,法による統治を標榜する日本においては,権限集中の度合いを変えることは憲法や数多くの法律の改正が無ければ実現できず,困難を極める。それゆえに,次に,あるいはその次に,誰が総理大臣になるにしても,新しいビジョンを示し,人心一新するような意気込みがなければ解決はできないのではないか。そのような準備が,日本のどこかで今も着々と行われていることを期待している。