[日誌]古い自民党を見るようだ...

日経新聞の記事によれば,亀井金融担当大臣はモラトリアム制度導入のための調整を指示したとか。まるで古い自民党政治を見るような思いだ。

確かに,現状の中小企業は資金繰りに苦しんでおり,技術や人材,やる気があっても倒産の危機にまで追い込まれそうな企業が多いのは承知している。売上高が前年比2割という企業も,私が住んでいる愛知県の自動車関係の企業であれば少なくない。債務(企業の借金)の返済猶予は,そういった企業の延命,救済につながるのかもしれない。

だが,果たしてそれでいいのだろうか。

現状の日本は,景気の悪化や社会の先行き不透明感によって需要が縮小しているとか,国際化,低価格化の脅威にさらされているというところに大きな問題があることは間違いない。景気の悪化は企業の利益を圧迫し,例えば雇用維持のための助成金がなければ大量解雇,あるいは倒産といった事態にまでいきかねない状況であることは理解している。

しかし,返済猶予は一時しのぎにはなっても,勃興する巨大な市場・製造力・資源を抱える発展途上国との競争や互恵関係を結ぶための力を蓄えることにはつながらないのではないか。

また,返済猶予を行うということは,貸し手の経営が大幅に悪化しかねないことを意味する。徳政令の時代,つまり鎌倉時代など貨幣経済のそれほど発達していない時代ならいざ知らず,経済の根幹を支える金融のシステムを,国際的にも理解しがたい政策によってゆがめ,さらにはおそらくはまたそのための救済方策をとらなければならないであろうから,またそのための政策をつくるといったことを重ねていくのは,人気取りが目的の短期的な視点での政策ではと思えて仕方がない。

もちろん,経済転換のために倒産がどんどん起こっても良いとか,雇用の調整,労働の質の転換のために,一時的にどんどん解雇が進んでもよいと思っているのではない。無策のままに過ぎれば,そのような深刻な事態に陥る可能性があることは承知している。

行うべきは,例えば倒産をしても立ち直る機会がたくさんあるような社会をつくること,職場を変えたり,再就職するためのハードルを低くするための支援を就労者側にも,企業側にもおこなうことではないか。