第二代農民工とは

昨日参加した中国ビジネス研究会で出てきた単語について,少し調べてみた。

百度百科の定義

百度百科の「第二代農民工」の定義は以下のとおり

いわゆる「第二代農民工」は,80年代生まれ(80后),90年代生まれ(90后)の農村労働者を指し,「新生代農民工」とも呼ばれる。彼らはそれ以前の労働者と違い,教育文化程度はやや高く,学校卒業後すぐに都市部で働くため,農業や農村,農民(の実情)などについては詳しくない。また,彼らは都会に溶けこむことを望んでおり,田代の都市文明を謳歌している。

百度百科では,以下,第二代農民工の特性の概述や,名称由来,誕生背景,直面する社会問題,第一代農民工との区別,差別と都市への溶け込み,心境,教育と発展,社会調査,評価,第二代農民工を新生代市民に変えていくためにと続く(2013年4月23日閲覧)。ちなみに中国で出版されている書籍では,「中国第二代農民工研究」という研究書が一冊,「新生代農民工」という用語を用いた研究書が複数出版されている。

「第二代農民工」に関する魚野メモ

中国では,「第二代農民工」とよばれる農村出身の若い労働者をいかに市民化するかが社会問題となっている。彼らは農村部で学校卒業と同時に都市部に働きに来ており,自分たちは農民ではないという意識を持っている。しかし,都市戸籍を持っておらず,社会保障などの福祉面で差別的待遇を受けているのみならず,就職や労働報酬・福利などの社会生活面,結婚などの民生面でも差別を受けやすい。また,故郷に戻ったとしても,農村生活に馴染めない,就労機会が少ないといった問題がある。

現実的な問題としては,上述のような差別がある上に彼らの生活が安定・向上しないうえ,集団生活が多いことから,個人の不満が非社会的な集団行動に結びつきやすいという懸念がある。実際,尖閣問題などで反日デモなどが発生する際,デモ参加者が暴力行為に走りやすいのはこうした不満を持つ農村出身の参加者らの日常の鬱憤晴らし行為の一種ではないかと思える。

この「第二代農民工」という名称が初めて使われたのは,前出の百度百科によれば,中国国務院が2009年12月31日に発布した「关于加大统筹城乡发展力度 进一步夯实农业农村发展基础的若干意见(都市部と農村部の発展度合いの統合を高め,農業および農村の発展の基礎を一層高めることに関する若干の意見)」とのことである(「首次使用了“第二代农民工”的提法」としている)が,上記の「若干の意見」にはそのような表現は見当たらない。ともかく内容はまさにこの第二代農民工の問題を扱った文章であることから,おそらく百度百科の表現が間違っているのであろう。

いずれにせよ,中国政府は2009年にはすでに「第二代農民工」問題の原因,課題を認識していたことになろう。農村,農業,農民の「三農問題」については2000年ころから広く認識され,数々の対策がとられたようだが,都市と農村の経済格差は依然として解決できておらず,「第二代農民工」問題につながっているのだろう。

「第二代農民工」問題は中国の内政問題ではあるのだが,依然として「反日有理(反日ならば何をしても良い)」を通じて日本とつながる問題でもある。ちなみに,前出の百度百科に掲載されている「第二代農民工」の項目にはいくつか写真が掲載されているが,10代,20代の元気で明るいお嬢さんたちの写真も使われており,暴力などの反社会的行為を想像しにくい印象にしているが,現実に目を向ける報道や文学がもっと市民権を得ること,人民の市民化が,進むことを願ってやまない。