NTTのSoftbankへの殴りこみ

NTTグループのひとつで固定電話の長距離部門を担当するNTTコミュニケーションズが,スマートフォン用のIP電話サービス「050plus」を発表した。現在はiPhone用のみだが,料金が安価で,iPhoneを日本で展開するSoftbankにNTTグループの一員がいわば殴りこみをかけたような格好だ。迎え撃つSoftbankや携帯他社,IP電話サービス会社,VoIPサービス会社の対応が注目される。

NTTコミュニケーションズ社が,iPhone 上で050IP 電話を利用することができるサービス「050 plus」の提供を開始すると発表した。これについてはIT関係各社の報道(日経BP ITPro, インプレス INTERNET Watch毎日コミュニケーションズ マイコミジャーナル)が報道している。

このサービスは,iPhone のデータ回線を使って安価に電話サービスを提供するもので,基本料金月額315円(別途ユニバーサル料金必要),,アプリのダウンロードは無料,通話料金はほぼ既存のIP電話サービス並み(例えば「050 plus」利用者間の通話や「OCN ドットフォン」など提携プロバイダーによるIP電話サービスへの発信は無料,国内一般加入電話宛の通話料は3分8.4円,国内携帯電話は1分16.8円。アメリカへの国際電話が9円/分など)である。ソフトバンクのiPhone向け通話サービスであるホワイトプランやwホワイトプランに比べて競争力抜群の価格設定で,しかも,アプリ内で料金比較までできるようになっている。

この発表のユーザーにとっての意義は,NTTグループという日本市場でのリーダー企業が取り組んでいるため,品質や提供時期の長期安定化が見込まれそうなことだ。同様のサービスは Skype や Vibre など各種あるが,いずれもベンチャー企業が出発点であり,海外事業者が提供していることもあって,番号が相手に表示されない,料金体系やサービスが頻繁に変わるなど,安定性や品質に疑問符をつけざるを得なかった。

また,日本市場へのインパクトという点では,いよいよ家庭用固定電話サービスや携帯電話サービス各社の高い通話サービス料金が終りを迎えるのではという感想を抱かさせる内容だということだ。IP電話サービス体系としての電話料金で,きちんとした品質の電話サービスを外出先でも使えるとしたら,わざわざ固定電話を保持したり,高い通常の携帯電話通話料を払う必要はない。これは,少なくとも日本では,既存携帯各社が通話サービスで儲ける時代の終焉が早まっていることを意味する。また,フューチャーフォン(ガラパゴス携帯,もっと分かりやすく言えば,スマートフォン以外の普通の携帯電話)の衰退を早めることにもなるだろう。

現時点では「050 plus」は iPhone 向けのアプリのみだが,近い将来,Android 向けも発表されるとのこと。元公社とは思えない,競争意識むきだしの取り組みに,同じく成果志向の強いソフトバンク,あるいは既存のビジネスモデルを崩されかけているNTT DoCoMo, AUなどはどう出てくるのだろうか。