魚野メモ:中国の公章[社印]

参加している中国実務法務研究会の発表で突っ込まれて、少し調べてみました。[]内は直前のことばが中国語で、日本語として理解すると誤解を招く同音異義語の場合に日本語訳を入れてあります。

公章とは

公章とは、中国の会社やNPO、行政組織などが、他の組織との契約を交わしたりする時に使う印鑑のこと。

公章の種類

公章にはいくつかの種類がある。

  • 法人印...会社の法定代表人の印章(合同専用章との使分けや効力の違いは未詳)
  • 合同[契約]専用章...外部組織と交わす法律上拘束力のある文章に押す。
  • 業務専用章...頻繁に使う連絡文書用などに使うための印章。
  • 財務専用章...財務関係で使う印象。
  • 党工団印章...党工団組織の活動に関して使う印章。

中国の法人が公章をつくるには

中国の法人の公章は、公安に申請し、准刻[刻印許可]を得た上で、紹介状又は証明書を持ち込んで専門業者に作ってもらう。中国の公章刻印業の営業には公安[警察]の許認可が必要。刻印申請が必要な印章は、法人印、業務専用章、財務専用章、合同章専用の他、銀行通帳印、現金出納印なども申請が必要。

公章をめぐる経営法務上の問題

中国には日本の印鑑登録制度に相当する制度が無く、契約書に押される社印が、本物かどうか、確認することが難しい。しかし、万が一、本物でない公章が押されていた場合、紛争が生じた場合に偽物の公章が押された契約書は無効だと主張されて契約内容が履行されないリスクが生じるので、公章が本物かどうか、必ず確認したい。

下記は、北京市公安局の職員が、捜捜(雑学知識サイト)に公印の真偽を確認する方法について回答を寄せているページのURLとそこに示されている確認方法の要点。

http://wenwen.soso.com/z/q182882783.htm

  • 規定に則った印影か否か(中国では、法人の種類ごとに印影の大きさや書体が法令で決まっている)、
  • 先方当事者の身分証明証や他の文書に押印されているものと同じ印影か否か、
  • 線が薄い、斜めに押されているなどの捺印の異常の有無がないか、
  • 公章についている製造番号や偽造防止記号等を確認する、など 。

しかし、上記のような方法では、巧妙に偽造された公章を使われた場合、印影が本物の社印と違っていたとしても、それを発見できない。相手企業側が、将来何らかのトラブルが起きるときに契約の無効を主張できるように本物の社印を使わないといった場合、日本であれば印鑑登録の証明書を取り寄せればよいが、中国ではそうした公の機関による証明がないという。

なぜ印鑑登録制度がないか。一つには、印鑑の製造は厳重に国によって管理されているので、印鑑は偽造されないのだという建前、もう一つには、偽造の容易な印鑑を重視せず、電子署名を含む別の本人確認手段を重視している、という2点が考えられそう。

確かに、印鑑は時代遅れの本人確認手段になりつつあると思う。デジタル技術や精密加工技術を使えば、印鑑の複製は簡単にできる。

公章偽造

中国でも実際には公章偽造が行われているようで、ネット上のニュースでも時々見かける。ネット上のQ&Aサイトでも、言われるがままに偽造公章をつくることにたずさわると、罪に問われるのかという質問が書き込まれたりしており、国の管理も行き届いていないことがうかがわれる。

最近話題になったのは、国有企業の公章偽造事件で、法人が不起訴になったこと。この事件では、企業ぐるみで公章が偽造されたとされており、事件を起こした当事者(自然人)はもとより、法人も罪に問うべきではないかという声が多いが、地元の検察は条文上、法人が公章偽造の罪に問われることはないとして一旦不起訴とした。しかし、共産党の指示で立件が再度検討中の模様。

http://www.legalweekly.cn/content1.jsp?id=170961

その他参考サイト

http://baike.soso.com/ShowLemma.e?sp=l188261&ch=w.search.baike.unelite