印パ緊張

インドとパキスタンが一触即発の状態にある。カシミール地方の領有権をめぐる争いは、世紀を越えて再び発火点に近づきつつある。両国は核爆弾を保有しており、通常爆弾での攻撃に対する反撃に使われる可能性も示唆されている。もちろん通常兵器での攻撃でさえ住民が悲惨な状況に陥ることは目に見えているが、核爆弾が使われるとすれば、およそ日本では想像だにできないような悲惨な事態となろう。都市部の(特に低所得層の)高人口密度、病院・衛生施設の低普及率、教育水準の低さ(これは救急やその後の治療の困難さを助長するだろう)、厳格な性役割分担、伝統社会の因習……。両国社会の現状は、大規模な対市民攻撃がおこったときの状況を一層悪化させる条件が揃っている。両国が持っている核兵器は、ピンポ イント攻撃をするようなタイプではないだろう。そして上述の条件と重なって、いざ事が起こった時の住民の悲惨さを思うと、立ち尽くすしかない自分の無力さを思う。

今回の事態では、またしても米英が調停の主役を演じるのだろう。いまのところ当然関わってくるだろうと思われるロシア、中国の表立った活動は見られない。旧宗主国と被植民支配国、対アフガニスタン戦争の主役・脇役、近隣関 係。ほめられたものではないだろうけれどもそういうものを使ってでも、何とか緊張をやわらげられないだろうか。

不思議に思うのはムシャラフ大統領という人物だ。腐敗した前大統領を軍事クーデターで排除し、民政移管をほぼ約束通りに進め、米国の対アフガン戦争への協力を選択したなど、個人的には現実的な政治をおこなう人物という認識だった—ここにあげた個々の政策選択はいずれも軽々に賛成すべきでないという思いはある—が、なぜ通常戦力でも核戦力でも勝ち目のないインドとの対抗を激化させているのだろうか。国内での不人気を外交問題でそらそうというのなら、 危険すぎる賭けである。

両国に対抗を思いとどまらせる効果的な方法はないものだろうか。日本は何ができるだろうか。日本人は何ができるだろうか。両国を説得できるロジック、外交カードはないものだろうか。今日はそればかり考えていた。