中国内陸部富裕層

昨日,貴州省貴陽市内のある中国人のお宅にお邪魔し,情報交換をしてきた。いろいろな人脈で10人以上集まって頂き,日本や日本産品に対するイメージや,生活感,仕事観などをヒアリングしたが,いずれも至って好意的,意欲的,前向きなもので,思わず日本国内の閉塞感や他責の態度・報道と比較してしまう。内陸部富裕層の実態の一部を報告したい。

中国内陸部の消費者や社会の現在を実感するため,現在貴州省という,中国でももっとも貧しい地域の一つの省都に滞在している。確かに,街中にはコンビニもカフェもなく,車の洗車はほとんどされていないし,人々の喫煙率も高い。先月滞在していた香港や,今回,途中で立ち寄った上海などと比べると,かなりの生活スタイルの違いを感じる。

しかし一方で,人口が300万人を超える都市で,水源が多く,電力が豊富な当地は経済発展が中国の中でももっとも高い地区の一つであり,80年代の留学時代に感じた社会主義中国という雰囲気はない。小さな商店にも物資があふれ,手持ち無沙汰でたむろしているような人々もまったく見かけない。

昨晩,当地のある企業経営者のお宅にお邪魔し,10人以上の当地の中国人に集まって頂き,様々な情報交換をしてきた。職業は企業経営者数名(幅広くいろいろな産業分野の会社を持つ人や,農業事業を手がけている人など様々)の他,公務員や教員,高級茶芸師といった,社会の中では成功者,ステータスの高い人とよばれる人たちで,自家用車を持っていたり,なかにはプール付きの別荘を持っている人もいる---今回のヒアリングはその別荘で行わせていただいた。

集まってきた人たち全員が,日本には好意的で,日本の産品に対しても強い信頼感がある。案内していただいた方の車は三菱系であるし,別荘の所有者は日本の食品や茶器,AVルームの音響機器など,日本製品をいろいろと見せてくれた。産品だけでなく,茶道文化や暮らし方など,日本訪問時の経験を踏まえながら,幅広い知識と思索,実践を経てのことのようだ。ただ単に品質やブランドに対する妄信的なあこがれというものではなく,かつての中国の文化が日本で咀嚼され,それが新しい刺激になって中国を活性化させている,またそれが日本にもよい影響を与え,プラスの循環を生み出しているなどといった,対等,謙虚,前向きな視点からの発言であった。

また,現在の日中関係が良くないことについても憂慮しており,民間での交流,経済の結びつきの強化がこうした問題の解決の一助になるだろうし,地理的にも離れられないもっと結びつきを強くすべきだという意見であった。

ホスト役の企業経営者のもてなしぶりも圧迫感がなく,気がきいたものであった。たまたま,ヒアリングの最中にぶどうをいただいていたのだが,こちらが手を拭くために自分のティッシュを取り出して吹いていたところ,招待者がさっと部屋の奥からボックスティッシュをとってきてテーブルに置いたり,お茶の話に話題が及ぶと,知人の茶館経営者や茶芸師を呼んで中国茶の手前を皆に披露させるなどし,普段の事業経営ぶりが伺え,これならば確かに経営している事業がいくつもあり,成功しているのも当然だろうという印象を与えるものであった。

残暑の厳しい名古屋と違い,当初は現在日中,気温がせいぜい27度くらいまでしかあがらず,屋外でも過ごしやすい。ヒアリングは邸内の屋外プール前のテラスで行われ,その後,庭にある別の建物で食事に招かれ,さらに場所を移して中国茶をいただいたが,おそらくこういったスタイルは,社会主義時代を除き,連綿と行われてきた中国の富裕層の社交の普通の姿なのだろう。1億人以上いるといわれる中国の富裕層の生活のほんの一端を垣間見ただけだが,国内でもっとも貧しいといわれる地域でもこのような生活様式があり,今後も何百年と,こうしたありかたが各地に存在するだろうという感慨をもって,館を後にした。

明日は,当地で行われている酒類展示会の様子を報告したい。