[読書]時が滲む朝—帯の文句

ワンちゃんに引き続き,楊逸女史の芥川賞受賞作,時が滲む朝を読んでみた。

帯には民主化勢力の青春と挫折とか,国を民主国家にしていくのは云々など,勇ましい言葉や目を引く言葉が並んでいる。文芸春秋社が日本国内ではどちらかというと保守的な価値観を大切にする出版社だが,作品の中身を帯から伝えるには,ちょっとバイアスがかかった抜粋の仕方だと思う。作品の中では民主化運動のことはあくまで主人公の活動にそういうことに関わってきた面があるという扱いだと思うのだ。

作者のねらった作品のポイントは,純粋な生き方,言い方を変えれば不器用な生き方をしてきた主人公が,歳を重ねてきて気がついたら自分だけが世の中の流れから取り残されそうになっているという無力感と,それでもなお家族が自分を愛してくれているという安心感,だからこそ家族のために強く生きようという思いのバランスにあるのかなと思う。民主化運動に関わった一人一人は英雄でもないし,打算だけでもない。そんなことも重ね合ってくる。だから,帯に違和感を感じるのだろう。