五輪終わる

北京五輪が終了した。多くの日本人は,五輪をきっかけに中国の均衡が崩れるのではないかとはらはらしていたが,ひとまずこの懸念は払拭された。中国が抱えている問題が解決したわけではないが,ともかくも五輪の運営自体は終了したということで,海外から注目を浴びるイベントを無事終えた運営側の人たちは充実感にあふれていることだろう。

取材の自由の制限や記者殴打,拘束,開催期間前や期間中の過激な治安対策,外観を重視して誠実さを欠いた感のある開会式運営など,様々な問題があった。特に政治面では,トップレベルでは価値観の多様化を許容する志向を強めているものの,未だ現場レベルでは名目や治安維持のしやすさ最優先であることが五輪の運営を通じて改めて示された。一方で,市民レベルでは,現在の状況は概ね許容範囲内であると,特に主要民族である漢民族を中心に受け入れている様子は,高い視聴率や治安の維持の面で示された。

一部には五輪後の中国での経済失速や政治の混乱を予想する向きもあるが,個人的には両方面とも大きな構造変化は無いと思う。経済についていえば中国は日本よりよほど政策の取り組み速度が速く—もちろんそれはそれで問題を含んでいるが,それはともかく—,シグナルが出てからの対応が素早いので,失策にしても得策にしてもコントロールの力が強い。また,政治面では現政権のトップはメンツにこだわった強硬な主張をしない傾向が強いのと,目につかないところで様々な民主化政策を進めていて不満のガス抜きがおこなわれており,また,万博も控えている現在,緊張感を持ちつつ合理的な執政を進めていく展開にも変わりはないと思う。

日中は,もっと協力し合えるだろうし,協力の道を探るべきだと思う。ロシアと違い,中国もまた日本と同様,エネルギー資源の乏しさから来る必然的な貿易立国であり,少子高齢化社会への対応や食の安全確保という喫緊の課題を抱えている。基本的に上下関係で人間関係をとらえる東洋的,儒教的な価値観も根強く残っており,こういった意味では日中は文化や経済環境の多くの点で利害関係が一致する。幸い,中国側から見れば,日本は近代史上特殊な関係にあった国ではあるものの,現在では世界に数ある国の一つという意識も強くなってきている。